【イベントレポート】Youth Co:Lab 日本ダイアローグ2024 in 仙台~みちのくアントレプレナーシップの可能性! ~

社会課題の解決に取り組む若手起業家を日本でいかに生み育てていくかについての対話型イベント「Youth Co:Lab 日本ダイアローグ」が2024年10月4日、仙台市で開催されました。この会は国連開発計画 (UNDP) とシティ・ファウンデーション、仙台市・みちのくアカデミア発スタートアップ共創プラットフォーム(MASP)が共催し、対面・オンラインのハイブリッドで開催されました。

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社会課題の解決に挑む起業家たちの思い
ダイアローグの会場はアーバンネット仙台中央ビル 4 階「スマートイノベーションラボ仙台」。会場にはゲストの4名が集まりました。この記事ではダイアローグで語られた4人の思いを紹介していきます。

関山和秀さん Spiber株式会社取締役兼代表執行役・文部科学省 アントレプレナーシップ推進大使
江尻綾美さん 福島大学 地域未来デザインセンター特任准教授
中原絵梨香さん 株式会社キューテスト 代表取締役
安藤日向さん Youth Co:Labソーシャル・イノベーション・チャレンジ日本大会2019 スケーラビリティ(汎用性)賞受賞者 ・東北大学大学院修士課程
山形県鶴岡市を拠点に人工合成クモ糸素材などのタンパク質素材を作っているSpiberの関山さんは、起業のきっかけの1つが、高校時代に見たNHKのドキュメンタリー動画だったことを紹介。多くの住民の命が失われたルワンダの虐殺について取り上げられた番組を見て「なぜこんな悲劇が起きるのか」という疑問を抱き、戦争や社会問題について深く考えるようになったそうです。

紛争や争いの原因として食糧やエネルギーなどの資源不足があることに気づいた関山さんは、大学進学後、この資源不足解決するために、テクノロジーを駆使したソリューションを模索するようになります。そこで出会ったのが人工合成クモ糸素材。この研究を学生時代から20年以上研究し現在の事業に繋がったそうです。
MASPの参加大学である福島大学の江尻綾美特任准教授はご自身のキャリアについて共有しました。東京で働いていた時、自分自身が仕事をしながら体調不良になってしまったという経験を元に、ストレスを軽減し、女性の健康を支える新規事業を企画。コロナ禍もあり新規事業は形になりませんでしたが、働きながら大学院に通い、念願だった博士号を取得した経験をお話しました。

その後地地元福島に貢献するための新しい活動を模索する中で、福島大学の「地域未来デザインセンター」で働く教員の募集を見つけ、地元・福島に戻りました。現在は、高校生等へのアントレプレナーシップ教育を展開し、また、出身地であるいわき市の地域課題をテーマにした事業創出をするべく活動しています。
株式会社キューテストの中原絵梨香さんは、産後ケアサービス「ファミリーシッター仙台」を立ち上げました。これは保育士が家庭を訪問して育児支援や家事のサポートを行うサービスで、生後0ヶ月から利用できます。
中原さんは母親を産後うつで早くに亡くし、地元のコミュニティに支えられたことで「家族以外の支え」の重要性を実感しました。また、自身の妊娠・出産を通じて、女性が自分の好きな街で子どもを産み育てられることがどれほど重要であるかを強く感じ、深刻な少子化と子育ての問題解決に取り組むことを決意しました。自分たちの子ども世代にこのような課題を残さずに、誰もが仕事と子育てを楽しめる社会づくりを目指しています。

東北大学の大学院に通う安藤日向さんは、「環境に優しい釣り具を作る」というアイデアを実現し、Youth Co:Labソーシャル・イノベーション・チャレンジ日本大会や東北大学のビジネスコンテストで賞を受賞しました。
安藤さんがアイデアを思いついたきっかけは、幼少期からの趣味である釣りにあります。小学校低学年の頃から釣りを楽しんでいましたが、釣り場で目にする釣り具のゴミ、特に釣り糸や釣り針が環境に悪影響を与えていることに強い問題意識を持ちました。このゴミを目にするたびに「何かできないか」と考え、大学に入ってから「環境に優しい釣り具を作る」というアイデアに挑戦することを決意し、釣具の開発に取り組んだエピソードが紹介されました。
みちのくのアントレプレナーシップの可能性とは
ダイアローグの最後には、本イベントのテーマでもある、「みちのくのアントレプレナーシップの可能性」について4名からお話がありました。

安藤さんは、学生の立場から「地方だからこそ、様々なつながりを活かすことができる。地方の学生はおそれずにチャレンジをすることが大事」とお話しました。
中原さんは震災から立ち上がってきた経験を挙げて「東北には社会課題解決を自分たちの手でやっていこうという機運がある。自分たちの子ども世代にもつなげるために背中を見せながら機会を作っていきたい」と力を込めました。
起業以来様々な経験をしてきた関山さんは、「想定外の危機はもちろんあるが、逆に想定外の機会も同じくらいあると考えている。想定外の機会をいかに活かせるかが大切」と話しました。
東京で民間企業に勤務したあとに地元・福島に戻り大学教員となった江尻さんは「コミュニティの温かさこそ、みちのくや地方のよさ。地方のほうがいろいろな方々との共創を作ることができる」と話しました。
セッション終了後、会場では交流会が開催され、登壇したゲストに加え、参加者の大学生や起業家、MASP関係者が交流を深めました。

Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)について
国連開発計画とシティ・ファウンデーションの共催で、起業家エコシステムの強化を目的に、2017年にアジア太平洋地域で発足しました。若者がリーダーシップを発揮し、社会革新を起こし、起業家精神を持つことによりSDGs(持続可能な開発目標)実行の加速を目指す、若者向けのエンパワーメントプログラムを展開します。
産学官民と若い世代を繋いで対話を促すほか、SDGsの達成を目指す社会起業家コンテストを開催、入賞者にメンター制度などの独自のネットワークを活用したスプリングボード・プログラム(アクセラレーター・プログラム)を提供し、起業家エコシステム内の協力団体と連携しながら若者の21世紀を生きるスキル開発に取り組んでいます。
ウェブサイト・SNS | https://bit.ly/YCL_TRO
Facebook & X & Instagram: @UndpTokyo
○イベント概要
Youth Co:Lab 日本ダイアローグ2024 in 仙台~みちのくアントレプレナーシップの可能性! ~
https://www.undp.org/ja/japan/events/ycl2024-japan-dialogue
オープニング挨拶:
・シティグループ証券株式会社投資銀行部門ディレクター/ESGサステナビリティ責任者 青木広明
・仙台市経済局スタートアップ支援課 課長 酒井宏二
・閉会挨拶:東北大学スタートアップ事業化センター 企画推進部長 石倉 慎也
・東北大学スタートアップ事業化センター 企画推進部長 石倉 慎也
・司会:UNDPユース連携担当 天野裕美