起業家

ITの力で、東北から豊かで幸せな未来を創る

ITの力で東北からスタートアップの種を創る取り組みをしている株式会社コー・ワークス代表取締役の淡路義和さん。自身の経験から、”強みを活かして弱みを補う”、個を活かす組織づくりを行う淡路さんに話を聞きました。

どんなイノベーションを目指しているか

ITの力で、東北からスタートアップの種を創っていく

「ITを軸としたモノ・コトづくり企業」として、システム開発から、ソフトウェア開発、ハードウェア設計、ダム制御システム開発などのデジタル化・DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を行っています。特にダム制御システムの開発・運用保守業務は全国にあるダムのうち約1割くらいを当社で請け負っています。

今後力を入れていきたいことはDXです。そもそもデジタル化とDXは違います。例えば、地域の人口に比例して売上が上がるビジネスモデルの場合、人口が減ると売上が減っていきます。デジタル化して業務の効率化をすると経費が削減できて事業継続性が多少上がりますが、結局本質的な課題である売り上げアップを実現しないと、やはり売り上げは下がっていっていつか損益分岐点を下回ることとなる。DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」というように「変化・変換」が大切です。地域の住民をターゲットにしたビジネスモデルを、日本全体や世界をターゲットにしたビジネスモデルに変えていき、人口が減っても潰れない会社に変革することこそがDXの本質だなと思っています。

ですからDXに取り組みたい企業のサポートを行っており、業務の強みをいかしつつ、地域に留まらない商品・プロダクトをつくり、チャレンジをさらに世界に展開していく支援をしたいと思っています。

起業して3年目くらいのときに東日本大震災が起こり、東京の会社が東北から撤退した影響で仕事が入らなくなり、東北の会社が倒産したのをみて、ショックをうけました。

震災を経て、自分たちの力でゼロからマーケットを新たに創造するような企業を増やす必要があると強く感じました。

東北は大企業から仕事を受ける、いわゆる下請けの企業が多いのですが、マーケットを創造する力は下請けだけでは身につきません。ゼロイチ(※)が出来る力を持った企業を東北から創っていかないと、地域の未来は明るくないと思ったんです。震災があっても自立していけるような会社をつくりたいし、そういった企業をITやテクノロジーの力で支援していくことで、少子高齢化・人口減少の著しい東北を元気にしていきたいと考えています。

(※)ゼロイチ:まだ世の中に存在しない製品やサービス、価値を作り出すこと。

株式会社コー・ワークスの<3つの想い>=同社提供

これまでの歩み

私は秋田県秋田市の出身で、父の転勤で高校から仙台に来ました。就職ではエンジニアとして大手IT企業の関連会社に入社しました。省庁や大手自動車メーカーの研究所の案件など、大きなプロジェクトに関わる機会もありました。当時野心は一定あったものの、何物でもなく普通のサラリーマンでした。

大企業に何年か勤めるうちに、これからは個の時代になるなと思いました。ある会社に属するのではなく、自立・自律した個人がプロジェクトごとに集まって何かを創り上げていくアメーバ型の働き方などになるだろうなと。そういう時代になる中で、多様性を生かす組織を創りたいなと考えていたのです。

6年程勤めた28歳の時にチャンスがありました。同時期にやめた会社の上司に声を掛けてもらってゼロイチを経験させてもらう機会をもらえたのです。そこで会社をやめて挑戦したのが「クレープ屋さん」でした。

事業計画をつくって、資金を300万くらい使って、事業計画や営業、人事、労務など経営のいろはを実学で学ぶことが出来ました。そして何より一番大きかったのは、レールから外れても大丈夫という自信がついたこと。「何かあってもクレープ屋さんをやれば生きていける」と思ったので、それで怖くなくなりました。

2年くらいクレープ屋さんをやって本格的にITで起業しようと思い、32歳の時に起業しました。

株式会社コー・ワークスの<企業理念>=同社提供

アイデア・技術を実現するために

メンバーそれぞれが持つ強み・弱みを補え合えることが大切だと思います。コー・ワークスの価値観の一つが「強みを活かして弱みを補う」であり、明文化して社内に共有しています。

会社としても、個性を活かすことを一貫してやっていきたいと考えていて、会社としてお互いの個性を理解するような機会をつくったり、強み・弱みを理解するための機会をつくったりしています。

個人レベルでどうすればいいか、というと、自立することです。自立は何でもかんでもできるということではなく、自分の個性を理解することです。自分の強みと弱みを理解して、チームのメンバーなどに伝えられること、自分の強みを活かしつつ、弱みを誰かに補完してもらうことが大切だと考えています。

未来へ向けて・高校生へのメッセージ

3-4年前くらいに、当時中学生だった子供に「これからの未来は暗いの?社会保険料とか税金あがるけど、収入はあがらないって聞いたけど」みたいな話を振られたことがあったんです。

正直自分の手が届かないことが多すぎるけど、その時に子供に「そうかもね」とは言いたくなかったんです。親として「お前の未来は真っ暗だ」なんて言いたくないですよね。だから「いやいや、そんなことないよ。なぜなら俺らの世代がいい社会を創って次の世代に渡すから」と言っちゃった。そこから自分事になったんです。息子に対していい社会を渡さないといけないので、ちゃんとやらなければ、ということが明確になりました。

そして家族や社員やお世話になってきた人など、自分の周りには大切な人がたくさんいます。あまり大きなことを言うのではなく、まずは自分の顔が浮かぶ人をちゃんと幸せにすることが大切だなと思って仕事をしています。

高校生のみなさんへのメッセージとしては、常に自分の強みと弱みは何かを考えることが大切です。ロールプレイングゲームでいえば、自分が戦士なのか魔法使いなのか、何が適性なのか知りたいですよね。そのために自分が何者なのかを見極めるということを意識して、とにかく行動して色々な経験をしてみたらいいと思います。例えば適性が魔法使いなんだとしたら、あなたはきっと魔法が使えていて、次々と新しい魔法を覚えることでしょう。

大学を卒業し、新卒で入社した社員には、若いころは無理がきくので20代は徹底的に弱みをつぶせと言います。自分ができないことを弱みと思っていても、ただやっていないだけで経験を積めばできるようになることって結構あります。しかしどれだけやってもできないことは弱みなので、そこは助けてもらうとよいのです。若ければ若いうちに色々経験した方がよくて、そういう経験は今後の人生に大きく影響すると思うので、自分の強み・弱みを考える意識をもっていくと、成長につながっていくんじゃないかと思います。

今の高校生はすごいと思うんです。自分の息子みていてもすごい知識あるし、将来のことを考えているし。だから、死なない範囲で色々とチャレンジしていく中で、こうやったら自分は楽しいなと思える選択肢が見つかって、それに向かっていけるようになれば幸せなんじゃないかと思います。

編集後記

株式会社コー・ワークスのほか、地域のDX化を推進するための組織「一般社団法人DXNEXT TOHOKU」でも理事・事務局長として活躍される淡路さん。ご自身の経験から発される「次世代のためにも、東北を変えていかなければならない」という言葉には説得力がありました。

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