システムエンジニアとして、女性の自立をICTで後押し
現役のシステムエンジニアとして活躍しながら、女性の自立をICTで後押しすべく、ICTの勉強会などを通じてコミュニティづくりを行う株式会社meguruの高橋そのみさん。自身がキャリアを積む中で悩み・苦しんだ経験を踏まえて「女性が自立して仕事できるようになるためのコミュニティづくり」を行う高橋さんにお話を聞きました。
どんなイノベーションを目指しているか
女性が時間や場所にとらわれずに働ける環境をつくる
「ICTスキルを身に着け、コミュニティで支え合い、自立して自由に生きる、そんな女性たちをたくさん輩出したい」という想いで、ICTを学べるコミュニティ「Sonomity」の運営を株式会社meguruの代表として取り組んでいます。「Sonomity」は「私の名前 そのみ」と「コミュニティ」の造語で、女性がプログラミングなどのICTスキルを学び合うコミュニティです。
システムエンジニアは常に人手不足でもあるので、プログラミングなどのICT技術を身に着けて企業の仕事を請けられるようになれば、一人で食べていくこともできます。一方、ICTスキルを身に着けるために一人で学び続けるのは大変です。そこで、コミュニティの中で仲間と学び合うことで続けられる仕組みを創りました。
ライフプラン(結婚・出産・子育てで一時的に離職する)を考えると、リモートワークでも働けるシステムエンジニアの仕事は女性に合っていると思います。私自身結婚後に退職したのですが、1990年代当時からリモートワークを活用してキャリアを積むことができました。今でこそリモートワークは普及しましたが、エンジニアでなければキャリアもそこで絶たれていたかもしれません。
また、エンジニアの仕事というとプログラミング技術が分かりやすいかもしれませんが、それと同じくらい大切なのは「何のためのシステムか、お客様は何を望んでいるのか」を明確にする、要件定義(※)、設計工程です。要件定義をするためにはお客様とのコミュニケーションが大切です。そういう意味でも、女性はエンジニアに向いていると思います。
※要件定義=ソフトウエアや情報システムの開発において、必要とされる性能や実施すべき機能などを定義すること。
これまでの歩み
私自身は新潟市出身で、就職で首都圏に出てきました。本当は大学も首都圏に進学したかったのですが、親に反対されて地元の大学に進学しました。
私が就職活動をしていた当時はバブル時代で売り手市場。「給料が良い」くらいで就職先を決めている人も多かったと思います。また、女性は一度就職しても結婚・出産を機に家庭に入るのが当たり前だったのですが、母から「男性と同じように働けるようにしたら」と言われたこともあって、“男性と同じように一生働ける仕事を“と思っていました。
求人誌をみていた中でシステムエンジニアの仕事を知りました。大学では経済学部で学んだのですが、システムエンジニアは文系でもOKと書いてあったことと、適性検査で適性があったこともあり、日本電子計算にシステムエンジニアとして就職しました。
就職してみると、理系出身でプログラミングができる同期と比べると自分は全くできない。やっていけるかとても不安でした。開発するためのプログラミング言語は複数あり、技術の進歩とともに移り変わりがあるのですが、現在でも使用されるUNIX、C言語から学び、サーバも触れるようになったのは、とてもラッキーでした。もしUNIXを学べる機会がなければ、今の私は無かったかもしれません。
結婚に伴う退職を経験し、2001年にシステム開発とICTに関する講師業で個人事業主となりました。夫の転勤もあって仙台に来ることになりましたが、人との縁にも恵まれ、2010年には大型のシステム開発案件を設計・開発する経験をしました。その後、縁あって仙台のシステム開発会社の役員としてキャリアを積み、再度独立し現在に至ります。
アイデア・技術を実現するために
技術を身に着けるために必要なのは、辛抱強さだと思います。また、技術自体を磨くことも当然必要ですが、技術の活用、もっと言うと全ての仕事において大切なのはコミュニケーションだと思っています。
私は人との出会い・ご縁を大切にしていて、基本的に断らないことにしています。どうしても請けられないことでも、一部でも何かできないかと考えて行動してきた中で、結果的に仕事につながることもありました。2020年に「Sonomity」を立ち上げましたが、コロナもあってオンラインの活動が中心でした。オンラインだけだと、どうしても人とのつながりが希薄になります。これらの経験を踏まえて分かったのは、やはりリアルでのコミュニケーションの場が必要ということです。幸い、「Sonomity」を通じて仲間もできたので、彼女たちと一緒に考えながら、今はリアルなコミュニティのづくりと活性化に向けて取り組みを進めています。
仙台市が主催する「Social Impact Accelerator」でのプレゼンの様子=高橋さん提供
未来へ向けて・高校生へのメッセージ
昔は情報も少なかったため、理系に進んだら研究者を目指すというようなある意味分かりやすい点があったと思いますが、今は情報量も多いので、キャリア選択は大変だと思います。
「なぜ勉強するのか」の問いに対して、私は「人と話す時に役立つから」だと答えます。働く上で人とのコミュニケーションは不可欠です。人と会話していると色々な話題があがりますが、基礎となる学びがないと話についていくことができません。
人手不足で仕事もたくさんありますし、ライフプランにあわせて時間や場所に関わらず働けるシステムエンジニアという仕事は、最初のキャリアとしていいのではないかと思っています。男性ももちろん、在宅とも相性いいですし。
今回の取材をきっかけに、多くの人にシステムエンジニアの仕事に興味を持ってもらえたらなと思います。
編集後記
人とのご縁を大切にしているという高橋さん。
今回の取材後に写真撮影を行っている際、入居されているオフィスビルの方をご紹介頂き、ビルに入っている店舗のコーヒーをすすめてくださいました。改めて、システムエンジニアとしての仕事ぶりはもちろんのこと、高橋さんの人柄にひかれる方も多いのだろうなと実感しました。