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市役所の起業家支援 仙台・東北から世界を変えるスタートアップを

仙台市役所スタートアップ支援課の白川裕也さんと財前輝久さん。多様な起業家を産み育てるエコシステムの構築を目指す仙台市で起業家やスタートアップ企業の支援に尽力しています。起業家を支援するため、仙台市はどのような取り組みをして来たのか、そして公務員としてどんなサポートができるのか。お二人の思いを伺いました。

=写真左が白川さん、右が財前さん

どんなイノベーションを目指しているか

仙台・東北から世界を変えるスタートアップの輩出を目指して

仙台市のスタートアップ支援課で公務員として働きながら、起業家を増やし、仙台から新たなイノベーションを起こしていくための様々な支援に取り組んでいます。毎年2月前後に「SENDAI for Startups!」という起業家応援イベントを企画していて、仙台市が運営する起業家支援プログラムを受講した起業家によるプレゼンテーションなどが開催されます。誰でも参加できるオープンなイベントなので、高校生でも見学することが可能です。この「みちのくイノベーターズライブラリー」にも、そのイベントでプレゼンテーションを経験された起業家の方がたくさん載っています。

また、仙台市には東北大学という研究機関がありますので、その強みを生かし、研究成果を活かして起業や事業化を目指す研究者の方を支援していく取り組みにも力を入れています。ほかにも小学生・中学生・高校生が起業を体験するイベントやワークショップを企画しています。2023年度は大学生・高校生が起業について学び、世界的に起業が盛んな場所の1つであるアメリカ・シリコンバレーに派遣するというプログラムを企画したのですが、定員の3倍にあたる300名の応募がありました。

私たちの働き方としては、このように様々なプロジェクトを進めていますので、1人ひとりが担当するプロジェクトを持っています。外部の起業家や民間企業の方など市役所外の方とお仕事をする機会が多く、前例のない仕事に挑戦しています。海外出張の機会もあり、起業家の方と一緒にフィンランドやシリコンバレー、シンガポール、ボストンなどに出張の機会があります。スタートアップ支援課のメンバーの誰かは毎月どこかに出張に行っています。

フィンランドで毎年開催されている国際的な展示会「SLUSH」での仙台市ブース

これまでの歩み

仙台市が起業家の支援に力を入れ始めたきっかけは、2011年の東日本大震災でした。震災からの復興に向けて新たに立ち上がった方々を支えていこう、起業家を生み出し続ける持続的な仕組みを作っていこうと、2013年に「仙台を日本一起業しやすいまち」を目指す宣言をしました。

はじめに取り組んだのは仙台市起業支援センターの設立です。仙台駅近くのAER(アエル)の7階に開設しました。それまでにも起業を支援する窓口はあったのですが、「アシ☆スタ」という愛称を付け、女性の起業も後押ししたいと、よりカラフルなデザインのロゴを作り、相談しやすい雰囲気づくりを意識して内装を変更しました。開設前は年間250件程度だった起業相談の件数が2022年度には年間約1,400件を超えるところまで伸びました。

仙台・東北の特徴は、社会課題の解決を目指す起業家(社会起業家)が多いことだと考えています。社会課題とは、例えば産業の衰退や医療人材、介護人材不足、格差の解消、防災など社会の中で解決に至っていない課題のことです。これが仙台・東北の起業家の特徴、強みだと思い、社会課題を解決していく社会起業家の支援を2017年に始めました。6年がたった今では社会起業家同士がつながり、先輩の起業家が次なる社会起業家を支援するような持続的な仕組みが出来上がっています。今後はこういった社会起業家と東北大をはじめとする大学の研究や技術シーズをつなげるようなコラボレーションを進めることでより良い取り組みが進むのではないかと考えています。

社会起業家の支援を行うと共に、最近はスタートアップといわれる、事業拡大を目指す起業家や大学発ベンチャーの支援も行っています。また、「第二創業」といわれる、これまでのビジネス・事業を大きく変革する東北の企業も支援してきました。スタートアップに対しては、先輩起業家や投資家に事業の相談をする機会や、東京でプレゼンをする機会を積極的に作ってきました。2022年度にはアメリカのシリコンバレーやフィンランドの国際的な展示会にも起業家を派遣しました。

シリコンバレーに行ったときは、現地の起業家との議論を通して、「とにかく早く試してみる」ということを肌で味わってきました。「まずはトライして、とりあえずやってみて、何か失敗したらそこで修正する」のがシリコンバレーの考え方でした。日本では「PDCA」といわれるようにまずは「計画」から入りますがアメリカではトライ。市役所の役割として、そういったグローバルな環境やスピードに触れられる機会を今後も作っていきたいと考えています。

SENDAI for Startups!の会場の様子

アイデア・技術を実現するために

起業家に出会いの場を提供することが私たちにできることだと考えています。1人のアイデアを100人にぶつけた方がビジネスや事業がよい方向に進んでいくでしょう。公務員ですのでビジネス面でのサポートはできないのですが、そういった機会を作ることで起業家のみなさんが思考の幅を広げるお手伝いができると考えています。

また、「仙台市がサポートしている」ということで起業家の信用を高めることができると考えています。我々行政とつながることで、他の団体を紹介できたり、あるいは実際のニーズを検証できたりする可能性があると思うので、色々なつながりを作り、そして一緒に考えていきたいと思います。

未来へ向けて・高校生へのメッセージ

「仙台スタートアップスタジオ」という起業家支援拠点を2024年春に開設します。こちらはNTTグループと連携し、仙台市中心部の東二番丁通に新しくできるビルの1~4階を活用して、起業家の相談窓口や様々なイベントなどを1か所に集約します。仙台駅からも歩いて10分ほどの場所にあります。仙台や東北のたくさんの起業家が集まる拠点になります。これまで仙台市では起業家支援プログラムなどソフト面の支援をしてきましたが、起業家が集まる拠点を作ることでハード面でもよりよい起業環境が整備されると考えています。

イノベーションを生み出すには、半径400メートル以内に起業家や支援機関の集積地を作ればよい、という考え方があります。海外でも大学や金融機関、起業家支援施設などが固まっている場所があり、そういったまちでは起業家がたくさん輩出されているそうです。「仙台スタートアップスタジオ」を中心にしながら起業家を集めていく、そしてまちの魅力を高めていく、こうなるとまちづくりの領域になってくるので、公務員としての役割を持つところになっていきます。

加えて、今は仙台で色々なプロジェクトが動き出しているチャンスです。駅前の再開発もそうですし、東北大学に「ナノテラス」という次世代放射光施設が建設されています。仙台の暮らしやすさや様々なチャレンジができる環境は他都市と比べても強みであると考えています。高校や大学を卒業した後も仙台に残ったり、あるいは卒業した後、仙台を離れた方が仙台に戻ってきたりするきっかけを作れればと考えています。また、若者のチャレンジを応援し、小学生・中学生・高校生など若い世代に対して起業という選択肢を意識していただくような取り組みにも力を入れていきたいと考えています。高校生のみなさんもぜひ仙台市が企画しているイベントに気軽に来てもらえたら嬉しいです。

編集後記

この「みちのくイノベーターズライブラリー」に掲載されている起業家や研究者も仙台市主催のプログラムに参加している方が多くいらっしゃいます。仙台市の担当者の方に取材することで、起業家支援の手厚さと本気度を感じました。

お2人がおすすめする本は「ハーバードはなぜ日本の東北で学ぶのか」(ダイヤモンド社)。白川さんは「ハーバード大学のビジネススクールの学生が東北で学ぶところに、社会起業家という東北の強みが見える」と話します。

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